気持ちと気持ちが,サーバーを通さずに繋がる,ピアトゥピアで。肌と肌がピアトゥピアで繋がる。唇と唇がピアトゥピアで繋がる。それは,気持ちいいこと? 情欲たること?
ピアトゥピア(P2P)ファイル交換サービスを行っていた倒産したスカウア社の資産競売が行われ,リキッドオーディオ社やリッスン・コム社との競り合いを経て,900万ドルでセンタースパン社が落札。同社はスカウア社の技術を利用できるようになったが,スカウアを廃業に追い込んだ著作権侵害の訴訟問題に直面することにもなる。
リキッドやリッスン・コムなどが,もしスカウアの技術を手にしていたら,それこそナップスターとベルテルスマン(過去記事)のような音楽業界への新たな秩序の発端となったのだろうが,センタースパンが落札したことで,やや温度差を感じる展開となっている。センタースパンはソケットというオンラインゲームユーザー向けのチャットソフトで,ファイル共有機能を提供しており,スカウアのプロトコルを付加することで,メディアファイルも扱える,より強靱なソケットのバージョンアップを行うだろう。だが,まともに進めば,スカウアと同じ道をたどってしまう。さてさて。結局はナップスターを中心に回り始めるだろう音楽業界同様,スカウアの力をこのまま沈めてしまうのはもったいない。ファイル共有と,わずかな,媚薬があれば,世界は変えられる(過去記事),センタースパンは,その馨しさを持ちあわせられるだろうか。
パソコン通信が一元化されたサーバー文化であり,インターネットは多元化されたサーバー文化だった。でも,結局はサーバーへのコンタクトに過ぎない。それがある日,個,へのコンタクトに変わる。メッセージも,ファイルも,情報も,すべて,なんの仲介物を通さずにコンタクトされる,コンタクトする。それが進化してきたネットワーク・マップの最終形態だ。まぁ実際には,個々人がネットワーク上のサーバーとなる,ということだが。そしてそれは,とてつもない気持ちいい繋がりかもしれない。なにも間に入ることなく直接,直接,繋がる感触。それを感じるから,私たちはナップスターやスカウアを求める。それは,云わば,本能として。
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